不斉炭素とムネオと野依
古い話になるが2年程前、家に帰ってテレビをつけた
ときのことだ。
鈴木ムネオがノーベル賞をもらった
ように見えた。
よく話をきいてみると、そのムネオによく似た人は
野依教授という化学の教授だった。
彼がノーベル賞をもらったのは、不斉分子の分離という
分野の研究が評価されたためである。
不斉炭素とは、炭素が原子同士の結合の中心となる際、
原子の組み合わさり方によって分子の見た目が変化する
のだが、その中心となる炭素原子のことである。
この見た目というのは、炭素分子を中心とした四角錐が
分子だとすると、ちょうど鏡に写したような状態である。
これをエナンチオマー(対称性)という。
L-グルタミン酸という表記が書いてあるのを見たことが
ある人がいると思う。グルタミン酸はアミノ酸の一種で、
実はそのグルタミン酸にも分子の構成により、D-、L-の
2種類が存在する。
人間の身体はL-型のアミノ酸からのみ構成されている。
(全ての生物もそうである。例外はダチョウの卵の殻など)
また、化学合成した分子は不斉原子の向きが決められなかった。
サリドマイドにより奇形の子供が産まれたのも、この不斉
分子が原因であった。
薬効がある分子と奇形を産む分子が出来てしまったのである。
しかも分離できなかったのだ。これまでは。
ムネオ似の野依教授が見つけ出したのは、この分子を分ける
方法である。分子さえ分けられたら有用な成分を取り出せられる。
(注:ただしサリドマイドは、一度分離しても体内で再び分子の形状が変化し
結局キラル体が出現してしまうので妊婦に用いることは出来ない)
もちろんこれはすばらしい研究で、当然ノーベル賞の価値がある。
しかし、それとはまったく関係ないのだが、彼はよく似ている。
ムネオと。
彼らの関係こそ、あたかも不斉分子のようである。
まるで鏡に映したようにそっくりで
まるで構成分子が同じかのように行動的で
でも結果が違う(逮捕とノーベル賞)
そう、ムネオも化学専攻していればよかったんだ。
そうすりゃノーベル賞があと一個は増えてたろうに。
あ、坂田師匠は化学専攻しなくて良いです。